吉井武道館、ではなくYOSHII KAZUYA SUPER LIVEに名前を変えたのは「武道館以外のところでもやる」というコンセプトからなのでしょうか。ともあれ恒例12月28日、2年ぶりに吉井和哉が日本武道館に帰ってまいりました。
今回は久しぶりの全方位解放(北1階は入れてなかったけど)、2年ぶり、吉井さんも気合い入っていたんじゃないでしょうか。去年の感想でも書いたけど、恒例、やおなじみ、よりも新鮮さを追い求めるのが吉井さんらしいといえばらしい。しかしそれよりもなによりも、観る側としてはなにしろ「2014年吉井さんのお姿ビタイチ拝見してませんが何か」状態だったので、1年ぶりのライヴ!ってことそのものにいや増す期待感、って部分も大きかった気がします。
幸運なことに下手のアリーナAブロックで見させていただいたので、久しぶりの吉井ちゃんを堪能いたしました。最初、SPINNING TOE HOLDをナポリタンズが演奏する中、吉井が下手の袖から出てくるんだけど、ステージに出ていくときにローディさんたちと握手して、一瞬袖で立ち止まり、一呼吸おいて颯爽と踏み出す姿が、なんというか猛烈によかった。吉井和哉から「ロックスター吉井和哉」になる瞬間とでもいうのかな。
カバーアルバム発売後なので、カバーやるだろうなとは思っていたんだけど、こんなにカバーの率が高いとは意外でした(笑)アルバムの曲ほとんどやったもんね。吉井も最初のMCで「カバーが多い」「カバーとオリジナルを交互に聞くことによって双方のありがたみが…」とか言っていましたが、ありがたみっつーかオリジナル曲になったときは観客の「わあっ」と湧き上がる感じが常にあって、待たれてるんだなーって吉井ちゃんも実感したんじゃないでしょうか。
MCといえば途中「MCの場所間違えた!」とか言ってましたけど、全体にMC感がもどってない感じなのがおもしろかわいかったです。途中で「みなさん大掃除はすみましたかー?」とか問いかけて、客が口々にまだー、もうやったー、これからー、とか雑多に応えるのに、「そうですかー」とかこれまた雑多な相槌で返しててガクーってなりました(笑)たぶん大掃除から心の大掃除にスムーズに持っていくつもりだったとおもうんですけどね!
あとなんと言っても笑ったのがサムライでのニュー・ジャケットプレイ!あれ、YOUTUBEでジュリーの「サムライ」みてもらえばわかるんですけど、肩に引っかけたジャケットを二度目の「片手にピストル」でばさっと落とすんですよ。やつはそれをやりたかったに違いなく、ジャケット(つか、コート)いつ脱ぐんだろうと興味津津の観客の前で、やおらジャケットを脱ぎ、そしてまた肩にひっかけるという所業に!ごめん思わず笑った。そして次の「片手に!」でまんまとばさっと落としたときも笑った。おまえのそういうかわいいとこ大好きだよ!個人的にこの曲はエレカシ宮本さんがかつてやったカバーがあまりにも鮮烈(かつ本人のキャラにも合っている)だったので、吉井は絶対寝顔にキスしちゃって一日旅立ちのばしちゃうタイプ…とか思って申し訳なかった。
今回はホーン、コーラス、ストリングス、襟裳岬での合唱団のちびっこたちなどなど、総勢60名もの大所帯で(吉井が「今日はすごいよ!」つってざわめく観客に慌てて「そんな有名な人じゃない、そんなお土産はない」つったのも笑った)、とくに管楽器が入るととたんに昭和のビッグバンドぽさが出て、それがカバーの曲とすごくマッチしてたな〜。今回のカバーアルバムでいちばん好きなのが「さらばシベリア鉄道」だったので、これが聴けて、かつすごくかっこよかったので嬉しかったです。
そのあとのMUSIC、点描のしくみ、ビルマニアの盛り上がりすごかったね!そうそう、みんな大好き点描のタンバリンプレイ、タンバリンが出てきただけで歓声の上がるアーティストも珍しい。間奏で投げるところ、投げる前に袖のスタッフがさっと腕をあげて吉井に合図してたの燃えたわー!ああいうの大好き!しかもそのあとセンターで先日のチャウユニでやった「ポリリズム」の振り付け一瞬紛れ込ませてて、なんやかんやいうて気に入っとるやないかい!と裏拳で突っ込みました(心の中で)。
アンコール、CDでも参加してくれた八千代少年少女合唱団と福島県伊達市立伊達東小学校の皆が来てくれて、襟裳岬を。モニタにも歌詞が出てたけど、歌詞見なくても普通に歌える、スタンダードの強み…と思いました。こういうスタイルの合唱が入った武道館は初めてだったので、なんか一陣のさわやかな風が吹き抜けた…といった風情がありました。彼らがハケるとき、吉井が「良いお年をー!」「お年玉いっぱいもらえよー!」とか言ってたので「おまえがやれー」と思わずツッコミ(関西人の性)。
そのあとアコギを持ってきて、ああもうカバーの曲ほとんどやったよな…と思ってたら、まさかのっつーか、いやまさかでもない(ライヴの最初に「今年の汚れ今年のうちに」つったときに頭をよぎりましたもんねこの曲)、東京ブギウギならぬおそそブギウギ!コロムビアに帰ってきたということでブギの女王といわれた笠置シヅ子大先生に敬意を表し!とか言ってたけど、もうおそそバージョンで歌いすぎて元の歌詞が出てこない吉井なのであった。観客の「フゥ〜!」の合いの手に「知ってるねえ!」とニヤリとしてみせたのよかったな。そして何度聞いても、あのサンキュー愛してます、アバンギャルドで行こうよ!には血が沸騰する!
しかしアバンギャルドのアウトロから、あのスネア二発が鳴り響いた時には思わず腰が抜けた。いや、去年福岡でも聞いてるんだけど、だけどさ!だってここ武道館だよ、武道館に鳴り響くSUCK、吉井のぐるんぐるん回すマイクスタンド、あーって、なんて武道館が似合う曲なんだろうって、思えばイエローモンキーをイエローモンキーたらしめていた曲はすべからく武道館を特別な場所にしてくれる曲だったんだななんて改めて実感して、ここに帰ってこられてよかった、おかえり、って思ったんだよなあ。吉井に対してじゃなく、 SUCK OF LIFEという曲そのものに。
年末の武道館だから、最後は新曲で終わるだろうと予想していて、その読み通りラストが クリア、でもってダブルアンコールでボンボヤージ。クリア、私の大っ好きな武道館全点灯の照明によく映える曲だった!そしてあのコーラスのところ、聞くたびに「これ今にもビール持った人が草原駆けてそう」とか思いましたしなんかタイアップっぽい!と思いましたし実際タイアップとれるといいね吉井ちゃん、と思いました。個人的に全点灯は最初の「うわあっ!」感が命なので「なかなかクリアできない」とかいってやり直してる場合じゃないよおじいちゃん!とも思いましたけども。
ボンボヤージ、吉井がハットと黒いコートをお召しで、なんかスナフキンみたい…とか思っちゃったんですけど、ついったで「中原中也みたい」ってツイートしてる方がいて、それや!と思いました。スナフキンとか言ってごめん。今日のセトリの流れで聴いたからかもしれないけど、どこかフォーク調というか、歌謡色の濃い楽曲と歌詞だった気がします。自分がいつか消えて(火葬場で灰になって)、そこからが本当の旅、というようなことを思ってつくったと言っていました。
コロムビアに戻ってきたことについて途中のMCでも触れていて、そして同時に1996年の武道館のことにも触れていて、吉井に言われるまでもなく、あのメカラ7の最後のMCで吉井がこの移籍のことを語った口調を、私ははっきりと思い出していたし、吉井もきっとそうなんだろうと思った。「すごくいいメーカーです、愛してあげてください」そう言って吉井はコロムビアを讃えたのだった。あのとき最後に歌った歌が楽園だった、これから楽園をめざすんだという気持ちだった、でも振りかえってみれば、あのとき立っていた場所が楽園だったのかなと思います。
メカラ7の映像を見て、最後にあの楽園を見ながら、おもしろいように号泣した自分を思い出すMCでした。あの彼らの背中の健気さを思い出すMCでした。
来年また会いましょう、と最後にいったけど、その時に会う場所はここなのかな。願わくば、どうか武道館でありますように。地方でやることにももちろん楽しさも意味もあるだろうけど、やっぱり吉井ちゃん、あなたには武道館が最高に似合う。そしてこのご時世、この日本武道館がいつまでいまのままの姿でいてくれるかわからない。できればその最後通牒があるときまでは、この日の武道館に立ち続けてほしい。もっと言えば、私にとってのTHE SONG OF THE YELLOW MONKEYであるあの楽曲も、もういちどこの場所に還してあげてほしい、そんなことも思った武道館でした。